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旅するスパイスキッチン

親友との時間、パスティーリャ

2015/11/09 18:25 晩ごはん 旅行・お出かけ 家族

 大学を卒業してからドイツで働いていた親友が結婚を機に帰国してから、私にとって最も好きな時間の一つが、彼女と一緒に料理を作ることだった。



彼女の家のキッチンに立って、彼女が海外のサイトとかヨーロッパで買った美しい料理本などから目星をつけておいたレシピや、私が旅先で覚えてきたレシピなんかをもとに、献立を考える。

そして、素敵な音楽をかけて、美味しいドリンクを飲みつつ、もちろんたっぷりとお喋りしながら、時間をかけてのんびりと料理する。



お互いのことは何でも分かっているから、「みてこのレシピ、絶対好きそうだと思ったんだ!」とドンピシャなものを親友は見つけてくるし、私は冷蔵庫をあけて当然のように昨晩の使いかけの玉ねぎから使うし、食べたいなぁと思ってたものが偶然一緒だったこともしょっちゅう。かんたんにレシピをさらった後は、特に決めなくても自然に役割分担して作業は進んだ。

料理が出来上がるころには、親友のご主人ともう一人の親友がやってきて、キャンドルをつけて、4人でわいわい食事をするのが定番。


 それぞれの誕生日や、引っ越し祝いやベビーの誕生祝いなんかイベントも、親友宅にあつまって、広々としたサロンの大きなテーブルに、お手製のカラフルな料理を並べてお祝いするのが常だった。


 一緒に色々作ったなかでも、特に思い入れのある料理は、モロッコ料理のパスティーリャ。

新婚旅行にモロッコに行って来た親友夫婦が、そこで一番気に入った料理がパスティーリャだったとのことで、英語のレシピを2つくらい比べながら二人で作ってみたところ、親友のご主人も大絶賛、私達も大満足の味に出来上がった。

旦那さんなどは、私が料理を作りに遊びにくると「今日はパスティーリャ作ってるの?」と期待するほど、お気に入りの一品になった。

紙より薄いパート・フィロの一枚一枚に溶かしバターを塗るなど手間がかかって、一人で作るのは腰が重いので、パスティーリャをどっちかが食べたくなったら、集まって二人で一緒に作るののが定番になった。


            *     *     *    


 昨晩の夕食に、こちらに引っ越してきて初めてパスティーリャを作った。

スーパーで買ったバクラヴァ用の生地が余っていたので、パート・フィロの代わりに使ってパスティーリャを作ることを思いついたのだ。

フライパンからスパイシーな香りが広がると、親友と一緒に料理を作った時間がみるみる蘇える。スパイスをついつい予定より多く入れてしまう私は、よく「オリジナルの味じゃなくなる!」と言って叱られたなぁ。でも、今日もやっぱりスパイスやショウガは多めだよ。


 親友と何度も作ったおかげで、今では一人でも気負わずパスティーリャを作れる。

今回はプルーンの代わりに、今住んでいる中央アジアの国の名産のドライアプリコットとレーズンを使った。料理が甘くなるのが苦手な主人のために、粉砂糖は使わず、飾りのシナモンも控えめにした。

いろんなことが変わってしまった。私を取り巻く環境とか、料理に対するスタンスとか。

でも、パリッとした皮と一緒に中に詰めたスパイシーなチキンを口にふくむと、それは初めて作った時に親友と感動したのと同じ美味しさだった。


 「パスティーリャを作ったよ」ってメールしてみよう。きっと、「私もちょうど女郎蜘蛛のことを思い出していたよ」って彼女は言うと思う。いつものように。

ドイツにいた彼女は日本に、日本にいた私は中央アジアに、また離ればなれになってしまった。

 でも親友が掛けがえのない存在であることは、どこにいても変わらない。私の人生に合わせて少しずつアレンジされていくパスティーリャの美味しさが変わらなかったように。




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